診察室の「伝言ゲーム」:この処方には理由(ワケ)がある!
こんにちは!日々、お子さんのケアに奮闘しているパパ・ママ、お疲れ様です。
今日は、診察室で起きた「伝言ミス」から発展する、ちょっとした誤解と、小児科医が薬を処方するときの「こだわり」についてお話しします。
1. 「鼻水の薬がない!」の真相
「パパに連れて行ってもらったら、鼻水の薬が入ってなかった!先生、出し忘れたんですか!?」と、ママが(鬼の形相で…いえ、心配顔で)再診に来られることがあります。(パパの場合もあります)
これ、実は「あえて」なんです。 最近の小児科学会のガイドラインでは、「ただの風邪なら、お薬は最小限の対症療法でOK」とされています。特に鼻水の薬(抗ヒスタミン薬)は、2歳未満のお子さんには推奨されていません。(※詳しくは前回のブログをチェック!)
また、難しい話になりますが、感冒の場合の鼻汁はアレルギーのときとちょっと違う理由で分泌されていることがしばしばです(つまりアレルギーの薬が効果が薄く、かえって眠気や口渇、期限不良の原因になることもあります)
良かれと思ってあれこれ混ぜた「全部入り盛り合わせ薬」を出すクリニックもありますが(お薬手帳をみてビックリ。そんなに飲ませるの?と思うこともありますが言いません)、当院は「エビデンス(根拠)に基づいた、体に優しい引き算の医療」をモットーにしています。
薬は飲んでおしまいではありません。飲んだあと、肝臓で代謝され、その後体のあちこちに作用するのです。その分かえってエネルギーを消費したり、肝臓の機能が悪くなったり、尿細管障害を起こしたり、抗生剤に至っては良質な腸内環境を狂わせてしまうことが多々あります。咳止めシールで頻脈を誘発することもあります。風邪をなおすつもりが、かえって体調を崩す原因になるのです。なので、抗生剤も感冒の初期には必要がなく、むしろ使用しないことが感染症学会や小児科学会で推奨されています。
2. 「ストレスのせい」と言われた…?
「ストレスって言われたけど、どういうこと?!この子のせいってことですか?」というお叱りがあったことが思い出されます。 これも、医師が「一つの可能性」として「心因性のこともあります」と可能性を示唆したことが、お付き添いの方からお母様に伝言ゲームで「原因はこれだ!」と断定調に変換されて伝わってしまった典型例です。このケースでは、基本的な生活改善が大切であると説明したことは伝わっておらず、その部分だけが強調されてしまったようでした。想像ですが、付き添いの方(祖母)からお母様にあなたのせいではないか、と責められたのかもしれません。残念ながら、こちらの意図が上手く伝わらなかったことを謝るしかありませんでした。今はどうされているのでしょうか、お子さんのことを考えると心配です。医師としての未熟さを感じました。
小児科の診断は、一度決めたら終わりではありません。 同じ風邪でも軽くすんだり、自己免疫疾患を発症してしまったりと、同じ原因でも経過はさまざまです。病状経過を見ながら、こまめに最適解を探していくのが小児科医師の仕事です。「その都度、最善を更新」しているのだとご理解いただけると嬉しいです。
3. 正確に伝えるための方法
「先生の説明、家に帰ると忘れちゃう…」「パートナーにうまく説明できない!」という方は、ぜひ以下の方法を試してみてください。
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メモ大歓迎: 診察中にスマホのメモ帳を広げてもOKです。
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「なぜ?」と聞く: 「鼻水の薬がないのはなぜ?」とその場で聞いていただければ、秒速で解説します。
- もらった資料に書き込む:当院では疾患説明のパンフレットも渡しています。
4. 最後に:餅は餅屋、小児科はプロへ
ご家族間で「ああ言った」「こう聞いた」とバトルが始まると、一番大切な「お子さんの治療」に集中できず、私たちもちょっぴり切ない気持ちになります(笑)。こどもの病気を大人の代理戦争にしてはいけません。
「この先生がこう言うなら、今はこれがベストなんだな」と、まずはプロである私たちを信頼してみてください。私たちは、お子さんが一番早く、一番楽に治る方法を常に考え、判断しています。薬は最小限にすることが、治療を最速にすることもあるし、より正確な診断につながることも多いのです。
ゴールは患者さんの健康です。保護者の方も小児科医師である私も、一緒にお子さんの健康を守っていけたら嬉しいです。




