小児のけいれん【胃腸炎関連けいれん】
インフルエンザと同じく、現在ウイルス性胃腸炎も流行しています。
ウイルス性胃腸炎でも痙攣が起こることがあり、胃腸炎関連けいれんと呼ばれています。
①主に5歳以下の乳幼児期に起こりやすく、急性胃腸炎の経過中に(ウイルス性腸炎)に伴う全身の痙攣を起こします。
②痙攣は短時間の全身痙攣(30秒~3分)で、何度も繰り返し、発作と発作の間に意識障害はないのが特徴です。
③5歳以下が多く、0~3歳時が好発年齢です。男女差はないとされています。
④下痢の発症から数日以内(2~5日以内)で起こることが多く、発熱を伴わないこともあります。
⑤明らかな脱水症状などを認めないことも多い
よく見られるのは、体を硬直した痙攣、手足がガクガクと硬直して動く、硬直間代発作です。
原因はまだ明らかになっていませんが、2000年初期から抗てんかん薬で効果があることが報告されており、胃腸と神経に関与する共通のナトリウムチャネルが関係していると推測されています。
胃腸炎ウイルスではノロウイルス、ロタウイルスの時期によく見られています。これは小児の間で流行しやすい胃腸炎であるのが理由と思われます。
以前はロタウイルス胃腸炎でよくみられていた痙攣ですが、ロタワクチンの接種が始まってからはノロウイルスによるものが増えてきている印象です。
胃腸炎罹患中に起こる痙攣のため、下痢がなかったり、胃腸炎初期のときはてんかん、脳炎、脳症、脱水症による合併症との鑑別が必要となります。
基本的に自然に治まること、その後の経過も良好であることから、診断がつけば特別な治療は必要ありませんが、痙攣が頻回である場合は抗てんかん薬
であるカルバマゼピン少量投与が有効です。通常1回の投与で治まりますが、けいれんの回数や経過によっては入院でその後の経過を見ることもあります。
ちなみに、胃腸炎関連けいれんでは、熱性けいれんで使用するジアゼパムの坐薬及び注射は効果がありません。
いずれにしろ、痙攣があれば小児科専門医にすみやかに受診して、診断を受けることが必要と考えられます。
【参考文献】
1. 小児神経学会:子どもでは下痢に伴ってけいれんを起こすのはどうしてですか?
https://www.childneuro.jp/general/6489/
2. 市山高志:軽症胃腸炎関連けいれんに対する少量carbamazepine療法. 脳と発達. 2005. 37巻6号.493-497.