小児のけいれん【熱性けいれん】
インフルエンザが流行しています。
インフルエンザは高熱がでることが多く、突発性発疹に並んで熱性けいれんの発症率がおおい感染症です。
今回は熱性けいれんについて解説します。
1️⃣熱性けいれん
2023年の日本小児神経学会より発行された熱性けいれんガイドラインを軸に解説します。
症状:熱性けいれんは主に発熱時に急に無反応になり、全身がぐったりして手足がピクピクする、眼球がどちらかに固定する、などの症状で発症します。全身の硬直や手足がガクガクする、それらの症状が複合的に認められることもあります。また、非痙攣性の発作のこともありますが、いずれの発作も数分以内で自然に終わり、その後に意識が戻ることが特徴です。自然に頓挫すること、頻回に繰り返さないことが脳炎、脳症、髄膜炎や熱せん妄との見分ける点として重要です。また、よく痙攣と間違われる症状に悪寒・せんりつ(寒くてブルブル震える)がありますが、ほとんどの場合で意識の障害があるのが熱性けいれんです。
年齢:主に6ヶ月から60ヶ月(5歳)までの乳幼児期におこります。通常は38℃異常の発熱に伴う発作性の疾患で、髄膜炎などの中枢性神経感染症、先天代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみとめられないこと、てんかんの既往のあるものは除外されます。実際には3歳以下がほとんどで、5歳以上は稀です。
対応:
☆安全な場所に移動する
☆周囲の危険なもの(熱いもの、とがったもの、割れやすいものから遠ざける)
☆体を強くゆすったり、急に部屋を明るくしたり、口に手をつっこむなどの刺激を与える行為はしない
☆平らなところに体を横向きに寝かせ(嘔吐による誤嚥を防ぐため、右を下にして)、衣服をゆるめる。
☆頭の下に毛布、クッションを置くなどして、頭部を守る
☆痙攣の様子や発症時間、持続時間を注意深く見守る
☆5分以上続く場合は救急要請を行う
一般的に発作が止まり意識も回復している場合には特別な処置は必要ありませんが、痙攣が5分以上つづく、意識が一旦もどっても発作が繰り返す場合には救急搬送を依頼してください。また、発作後に意識が回復しない場合も救急受診で小児科専門医の診断を受けたほうがよいでしょう。もし痙攣後元気だったとしても、初めての発作のときは救急受診でよいと思います。
解熱剤の使用:以前は使用について議論があったこともありましたが、現在では全身状態の必要度に応じて使用してよいとされています。ただし、解熱剤の使用は熱性けいれんの再発の予防にはならないと言われています。
予後:一般的に神経学的後遺症はなく、予後は良好と言われています。ただし
①部分発作の要素がある
②15分以上持続する発作
③一連の発熱期間内で、通常は24時間以内に複数回反復する発作 の場合は
これらはてんかん発病因子の一つと考えられています。経過により、脳波、頭部画像検査、血液検査で精査を行います。ガイドラインでは5歳以上での熱性けいれんでは発作を反復した場合、発熱に伴う発作ではなかった場合ではてんかんを念頭に小児神経専門医へ紹介することを推奨しています。
また、インフルエンザ流行時期の場合は脳炎、脳症との鑑別が必要となりますので、インフルエンザ罹患中の痙攣で上記があてはまる場合には可及的すみやかに救急要請を行って下さい。
熱性けいれんを経験したあとの発熱時の対応について:
熱性けいれんはそもそもが良性の疾患であり、基本的に単純性の熱性けいれんでは予防する必要はないとされています。しかしながら、発症時の体温が38℃以下、痙攣の回数、経過、持続時間や家族歴などのリスク因子を認め再発のリスクが高い場合に、ジアゼパム坐剤を予防に使用することがあります。
投薬や予防については、小児科専門医または小児神経専門医の指示に従ってください。
予防接種:予防接種当日の体調が問題なければ可能です。また、痙攣後に予防接種が可能となる期間においても、特に制限はなくてよいとされています。
予防接種による副反応の発熱による熱性けいれんの誘発よりも、実際に感染症に罹患して発症するけいれん発作や脳炎、脳症の合併症のほうがはるかに重症で重篤な場合が多いため、ガイドラインでもこの記載が入ったことは大いに意義があると考えられます。
【参考文献】
日本小児神経学会:熱性けいれん診療ガイドライン2025
熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023(全ページ)